ふと不思議に思ったこと
先日、ある事実を知って「あれ?」と引っかかりました。オメガ6という脂は、口から摂りすぎると体に良くないと言われているのに、肌に塗るぶんにはむしろ良い、というのです。
同じ一つの成分なのに、食べると良くなくて、塗るといい。これはどういうことなのか。自分でもうまく飲み込めなかったので、腰を据えて調べてみました。すると、矛盾しているように見えて、実はちゃんと理由のある話だと分かってきました。
そもそもオメガ6とは
オメガ6は、脂肪酸という「脂の部品」の一種です。代表的なものにリノール酸があり、これはサラダ油をはじめ、多くの植物油に含まれています。
大事なのは、これが「必須脂肪酸」と呼ばれること。つまり、体の中では作り出せず、外から取り入れるしかない成分です。私たちはこれを食べ物から得ていますが、実は肌に塗ることでも直接届けられます。この「二つの入り口がある」ことが、後の話につながってきます。
食べるときの話 ― 多すぎるとバランスが崩れる
まず口から摂る場合です。
リノール酸は体の中で、炎症に関わる物質を作る流れの入り口になっています。適量ならまったく問題ないのですが、摂りすぎたり、相方であるオメガ3(魚の脂などに多い)とのバランスが大きく崩れたりすると、体が炎症のほうに傾きやすくなると言われています。
現代の食事は、揚げ物や加工食品を通じてオメガ6に偏りがちで、逆にオメガ3が不足しやすい。この偏りが良くない、というのが「オメガ6は摂りすぎ注意」と言われる背景です。ちなみに、鎮痛薬の回で触れた「ロイコトリエン」という炎症物質も、元をたどればこの脂の仲間から作られます。話がつながっているのが分かると、少し面白いところです。
ただ、ここは念のため。「オメガ6は毒だから一切摂るな」という意味ではありません。あくまで摂りすぎとバランスの問題で、適量は体に必要な成分です。私自身は、この話を極端に受け取らず、和食を中心にして油が偏りすぎないようにする、くらいの距離感でつきあっています。
塗るときの話 ― 肌の「材料」になる
次に、肌に塗る場合です。こちらは、食べるときとまったく別の働きをします。
私たちの肌の表面には、水分を逃さず刺激を防ぐ「バリア」があります。このバリアは、セラミドという成分がレンガのように積み重なってできているのですが、リノール酸は、そのレンガを作るための欠かせない材料なのです。
肌はこのリノール酸を自分では作れません。そして、材料が足りなくなると、肌は代わりに別の脂で穴埋めをしようとします。ところがその代用品では、レンガがうまく噛み合わず、すき間だらけの壁になってしまう。これがバリアの乱れ、つまり乾燥やかゆみ、湿疹につながっていくと考えられています。乾燥肌やアトピー、乾癬の肌では、この材料不足が起きていることが分かっています。
だからこそ、リノール酸を多く含むオイルを肌に塗ると、足りない材料をピンポイントで補える。壊れた壁に、ちょうどいいレンガを届けてあげるようなものです。
なぜ矛盾しないのか
ここまで来ると、最初の疑問が解けます。
食べるときのオメガ6は、体全体をめぐる「バランスの一員」として働きます。だから、多すぎれば全体の均衡を崩してしまう。一方、塗るときのオメガ6は、肌という現場に直接届く「建材」として働きます。足りない場所を補うのだから、むしろありがたい。
同じ成分でも、「どこで」「どれくらい」使われるかで役割がまるで変わる。食べる話は全身のバランス、塗る話は局所の材料補給。この二つを分けて考えれば、矛盾でもなんでもなかったわけです。
私のつきあい方
そんなわけで、私はこの成分を、口からは摂りすぎないように、肌には足りないぶんを補うように、と使い分けています。
一つの成分を「良い・悪い」で決めつけず、入り口によって顔が変わることを知っておく。こういう見方ができると、健康情報に振り回されにくくなる気がしています。今回も、ひとつ賢くなれた気分です。

