最後の砦でした
これは、最近まで決意するのをためらっていたものです。
除去編も⑩まで来たとおり、私はこれまでいろいろなものを手放してきました。口にするものだけまとめても、お酒、小麦、カフェイン、ナス科の野菜、乳製品、植物油(オメガ6)。世の中の標準的な人と比べたら、かなり我慢しているほうだと思います。
正直に言えば、「あー、なんでこんなに我慢しなくちゃいけないんだろう」と思うこともあります。
そんな中で、甘いものだけは、自分に許される心のオアシスでした。もともと和菓子が好きで、食べ物の中では最後の砦のような存在です。甘いものや砂糖がアトピー体質に良くない、という話は聞いてはいたものの、正直、聞こえないふりをしていました。
でも、やはり可能性として捨てきれない。泣く泣く、除去することにしました。
なぜ甘いものが良くないのか
せっかくなので、なぜ良くないのか、その仕組みを調べてみました。
キーワードは「糖化」です。体の中で糖が多くなると、その糖がたんぱく質や脂と結びついて、AGEs(終末糖化産物)と呼ばれる物質を作ります。これは、いわば体の中で”焦げつき”のようなものができるイメージです。
やっかいなのは、このAGEsが炎症のスイッチを押してしまうこと。細胞にある受け皿にくっつくことで、炎症を起こす物質(サイトカイン)の産生が促されると考えられています。しかもAGEsができる量は、血液中の糖の量に比例するため、甘いものをたくさん摂る食生活は、そのまま炎症の材料を増やしてしまうことになります。
実際に、重症の乾癬患者さんの皮膚や血液では、AGEsの値が高くなっていることが報告されています。アトピー性皮膚炎でも、症状が悪化しているときに関連する数値が上がっていたという報告があります。
もうひとつの道筋もあります。血糖値が急に上がると、それを下げるためにインスリンが大量に出ます。このインスリンや、関連するホルモンの急上昇が、皮膚の細胞を過剰に増やす方向のスイッチを押してしまう、と言われています。乾癬は、まさに皮膚の細胞が異常に速く増えてしまう病気なので、この経路は無視できません。
要するに、甘いものは「炎症の材料を増やす」道と、「皮膚の細胞を増やしすぎる」道の、二重の意味で肌に不利に働きうる、ということです。聞こえないふりをしていた話が、調べてみるときちんと筋が通っていて、観念するしかありませんでした。
それでもOKにしたのが、冷やし蒸かし芋
とはいえ、甘いものを全部やめてしまうと、心のオアシスがなくなってしまいます。そこで、自分の中でOKにしたのが、冷やした蒸かし芋です。
ポイントは「冷やす」ことにあります。
さつまいものでんぷんは、加熱すると消化されやすい状態になりますが、その後で冷やすと、その一部が「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」というものに変化します。これは名前のとおり消化されにくいでんぷんで、小腸で吸収されずに大腸まで届き、食物繊維に近い働きをします。
これがなぜありがたいかというと、消化に時間がかかるぶん、血糖値の急上昇を抑えてくれるからです。さきほどの話でいえば、糖化もインスリンの急上昇も、どちらも「血糖値が急に上がること」が引き金でした。冷やすことでその急上昇を抑えられるなら、同じ芋でも体への負担がずいぶん変わってきます。
しかも、レジスタントスターチは大腸で腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸という物質を作り出します。これは腸内環境を整えるうえで役立つと言われていて、日ごろから発酵食品を大事にしている私にとっては、うれしいおまけです。
作り方と、私の癒しの時間
作り方は簡単です。生のさつまいもを、電子レンジの200W(解凍モード)で10分ほどかけて、じっくり火を通します。低い温度でゆっくり加熱すると、とてもしっとり甘く仕上がります。それを冷蔵庫で冷やしておく。これだけです。
もともと和菓子系が好きだったので、この甘いお芋は、和菓子に近い食感がして最適でした。砂糖を使っていないのに、しっかり甘い。これをカフェインレスコーヒーと一緒にいただくのが、今の私の癒しの時間です。
失ったものは大きいけれど、代わりの居場所は、ちゃんと見つかりました。
まだ始めたばかりです
正直なところ、まだ始めたばかりなので、これで肌がどう変わるかは分かりません。長年の「最後の砦」を手放したのだから、何か良い変化があってほしい——そんな期待もありつつ、経過はこれからも観察していきます。
我慢ばかりの食生活のようですが、不思議と、代わりになるものを見つけていく作業は、少し楽しくもあります。何を諦めるかより、何なら続けられるか。そういう探し方のほうが、私には合っているようです。

